19-05-27 : となりの弁護士「『令和』とこれからの日本~ある一人の知識人の機知」(弁護士 原 和良)

1 5月1日は、新元号の「令和」フィーバーであったようだが、日頃あまりテレビを見ない私にとっては、あまり実感はなかった。それでも、SNS通じて狂喜乱舞の様子が伝わってきた。年賀状よろしく、「令和元年おめでとう!」のメッセージもたくさん入ってきた。
他方で、天皇制そのものや戦争責任を鋭く追及する議論やこのグローバルな時代に元号かという実用面からの不要論もあった。

 

2 報道によると2月の段階で安倍首相は、新元号候補に不満をいただいていたようで、追加提案を募るよう側近に指示したという。そして、3月下旬に出てきたのが、「令和」だったそうだ。
提案者は万葉集研究者の中西進さん(日本ペンクラブ元副会長)。
実は、昨年9月に日本ペンクラブでは「憲法についていま私が考えること」(角川書店)という随筆集を出版し、私は若手(?)会員としてその企画・編集に携わった。私は、たまたまではあるが何名かの原稿編集の担当の中に、中西さんの原稿編集の担当を割り振られ、編集に携わった。中西さんの文章は、「天皇陛下万歳」と叫んで命を落としていった戦死者に対する死を無駄にしないという不戦・平和の決意であった。
「人民の人民による人民のための政治」という有名なリンカーンのゲティスバーク演説(南北戦争の戦没者たちの追悼のために行ったわずか2分間の短い演説)を引き、この理念が日本国憲法に導入されていると説く。
編集作業をしながらいたく感動をした。

 

3 5月1日付で中西さんの「令和」誕生にまつわるインタビューその中で、令和を読んだ詠み人は太宰府に左遷された大伴旅人であるとし、旅人の「権力にあらがいはしないが屈服もしないという気構え」が旅人の歌には込められていると解説する。
そして、これからの日本について、「大国主義を捨てて小国でいいからきらりと光る真珠のような国になるべき。」「真珠のような輝きがあるのが、憲法9条である。」と中西さんは、憲法の大事さを訴える。
同じような趣旨のインタビューが後日、朝日新聞にも掲載されている。

 

4 「令和」は、命名者たちの意思とは全く反し、しかも気づかれないように、「権力にあらがいはしないが、屈服はしない」という中西さんのささやかでかつ機知にあふれる抵抗の気持ちが込められた新元号であると思うと、少し、ほっとする気持ちになる。

以上

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