20-02-28 : となりの弁護士「一般法と特別法」(弁護士 原 和良)

1 法律をかじったことがある人はどこかで聞いたことがあると思うが、日本の法律体系は、一般法と特別法という関係が問題になることが多い。私企業を含め私人と私人の間の権利義務関係のルールを定めるのは、一般法では民法である。しかし、民法だけではルールが不十分であるときには、ある類型の契約関係に関して特別法が制定されている。商取引や会社のルールを定めるのが商法や会社法であり、会社(使用者)と労働者とのルールを定めるのが労働契約法や労働基準法である。

特別法がある場合には、特別法が優先し、特別法に定めていないことは一般法を適用するというのが、法律のルールになっている。

 

2 2020年4月1日から新民法が施行される。この中で、議論に取り残された特別法がある。労働基準法に定める給料や有給休暇に関する時効の規定である。今回の民法改正で時効制度が整備され、一定期間が経過すると権利行使が制限される消滅時効の制度が5年とされた。他方、賃金・残業代や有給休暇の消滅時効は、現行法は2年のままである(退職金の時効は5年)。労働基準法は、最低限の労働条件を定めてそれを下回る契約は無効とする法律である。最低基準を定めた法律なのに、飲み屋のツケは今回の改正で5年間は保障されるのに、残業代は2年分しか法律上保障されないという、おかしな現象が発生している。

サービス残業が当たり前の日本社会で、未払い残業代を5年に遡って請求する権利を認めたらたまったものじゃない、という主に大企業経営者の本音が見え隠れする。

遅ればせながら現在、労働基準法の改正による時効制度の見直しが進められているようである。

 

3 特別法と一般法の関係をめぐっては、まったく理解できない事態が他でも起きている。

検察官の定年延長問題である。政府は、閣議決定で63歳と法定されている検察官の定年を延長するとした。検察庁法は一般法である国家公務員法の特別法であり、検察官の定年には特別法である検察庁法が優先適用される。過去の政府答弁も、明確にそう答えている。

それを、立法改正なしに閣議決定で改定することは、行政による立法権の侵害であり、どう転んでも認められるものではない。長寿社会を迎えて就労年齢が伸びているのは確かだし、どうしても検察官の定年を延長したいのであれば、国会に検察庁法の改正案を上程して法改正をすればよい。今回の閣議決定は、無効な閣議決定としかいいようがない。

 

以上

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