1 昔は、高層の団地やマンションのベランダに色とりどりの布団や毛布が並んで干されているのは、街で普通に見かける風景であったし、生活感あふれるその光景は庶民生活の活気すら感じられる当たり前の日常だった。
しかし、最近、めっきりベランダでの布団干しをめっきり見なくなった。多くのマンションでは、管理規約でマンションのベランダに布団を掛けて干すことは禁止条項になっているという。
その理由は、①布団を叩くことによって、騒音やほこりが周囲に広がり迷惑である、②特に敷布団が階下に落下した場合、階下の車や通行人を直撃し事故につながる危険がある、③マンションのベランダに布団が干されていると美観を害し、中古マンションとして売り出すときにマンション全景の写真に布団が写っているマンションは市場価値が下がる、ということのようだ。
マンションのベランダは、区分所有者の専用使用部分ではあるが、あくまでも共用部分であり(火災の際は避難経路ともなる)、共用部分の管理権限と責任があるため、このような使用制限も規約上有効とされている。
布団一つ干されていないマンションの方が、資産価値が高い、と言われると昭和生まれの私には何とも寂しい気もするし、毛布や掛け布団くらいならそんなに危険でもないのではと思ったりするが、世の中のこれがトレンドだという。
2 マンションの上階からの落下物ということでは、最近いくつかのマンションで、新築分譲時の手抜き工事により、外壁タイルに大量の浮きが発生し、大規模修繕にあたり管理組合が数千万円規模の修理費用を負担せざるを得ないという深刻な相談を受けた。
住宅の品質確保に関する法律では、「構造耐力主要な部分」や「雨水の侵入を防止する部分」については、10年間の瑕疵担保責任が規定されている。雨水の侵入を防止する部分には「外壁」が含まれるが、外壁タイルは外壁の化粧であり化粧の瑕疵は外壁の瑕疵(欠陥)に含まれない、というのが通説的な見解である。
この2つの瑕疵担保責任は、建物の所有者の安全に着目した規定である。確かに、柱が折れたり、雨水が侵入するマンションでは怖くて住んでいられない。しかし、外壁タイルの剥離落下は、高層であればあるほど、階下の公道の自動車や歩行者を直撃し、重大事故につながりかねない。布団どころの騒ぎではない。そして、外壁タイルの瑕疵を知りながら管理組合が放置すれば、事故発生の責任は管理組合に対して問われることになる。
民法上の不法行為責任を追及しようにも既に、マンションを施工した建設会社は、倒産して存在しない。法律の改正とマンション購入者の保護強化が望まれる。
以上