17-01-30 : となりの弁護士「大学への文部科学省官僚の天下り」(弁護士 原 和良)

1 1月20日のマスコミ報道では、文部科学省が組織ぐるみで違法な「天下り」あっせんを行った疑惑が報道された。内閣府の監視委員会によると、吉田前高等教育長の在職中に、文科省人事課が通じて履歴書を送るなどして、国家公務員法が禁止している再就職あっせんや求職活動が行われていたという。さらには、法違反を隠ぺいするために、別のOBが再就職をあっせんしたという虚偽の想定問答集を作成し、早大と口裏合わせを行っていたことも判明している。

2 公務員の再就職活動は全く許されないわけではない。しかし、幹部公務員の「天下り」は、現役官僚との太いパイプを使っての特定の企業・団体と政府機関との癒着や談合などの温床となり、透明公正な行政活動を歪めるおそれがある。そのために、2007年に国家公務員法が改正され、あっせんや在職中の利害関係企業への求職活動が禁止された。

他の省庁からは、「もっとうまくやればよかったのに」という声も聞こえる一方、文科省をスケープゴートにしたトカゲのシッポ切りの演出ではないか、という冷ややかな声も聞こえてくるが、何とも嘆かわしい限りである。

3 今大学は、少子化の中で、生き残り競争が激化している。大学経営が悪化する中で、いかにして研究費や補助金を確保するかが、大学の最優先の課題になっている。

こうした中で、教育予算の配分をつかさどる文科省の動きや情報を察知し、それに「迎合」する大学政策を優位に進めるには、省の内部にいた人間を、高給を保障して受け入れるのが手っ取り早い。このようなうまみを知ったうえで、大学側は積極的に「天下り」を受け入れているのである。

もともと、大学には憲法上学問の自由が保障され、その制度的な保障として時の権力の意向に左右されずに大学を自主的に運営する大学の自治が保障されている。

「天下り」によって、大学は政府・文科省の出先機関と化し、今や時の権力に迎合することを競う場となってしまった感が否めない。

4 ロースクールと文科省

2004年、ロースクールができたとき、法務省・最高裁の下にあった法律家養成制度が、大学自治の保障されたロースクール(大学院)の下でなされることで大きな進歩であるという議論があった。しかし、現実は、法務省支配が文科省支配に代わっただけではないか、というのが本質であり、法曹養成のあり方も今曲がり角に来ているといわなければならない。

以 上

(弁護士原 和良「となりの弁護士」「オフィス・サポートNEWS」 2017年1月号掲載)

Menu