11-07-31 : となりの弁護士「先が見えないときこそ」(弁護士原 和良)

1 震災・津波・原発と、毎日暗いニュースが続く。特に、放射能による大気と食物の汚染は、私たちが体験したことのない目に見えない恐怖であり、目に見えないだけに負のイメージは無限大に膨らみ続ける。これに、輪をかけているのが、政治の混乱である。

震災復興に向けて、多くの日本人が励まし合い、連帯も広がっているのは確かであるが、生命・身体・経済生活の不安の中で、「先が見えない」という雰囲気はぬぐいきれない。

もともと震災前から構造的な不況の中にあった日本。震災復興から真の経済復興までの道のりは険しく、前途多難であることは確かだ。

将来展望は見えにくく、多くの人が経営不安、将来不安を抱えている。目の前の仕事が本当に、自分の未来につながっているのか、不安はつきない。

2 しかし、このような時こそ、目の前にある仕事を自分に与えられた課題だと考え、どんなにつまらなくても一心不乱に取り組むことが重要である。人間の不安は、心を集中して目の前にある課題に取り組み格闘する中でどこかに吹き飛んでしまうものである。

もうひとつ大事なことは、目の前の仕事に取り組むと同時に、将来の理想と目標を明確にイメージしてその実現のために一つ一つ打つべき手を打つことである。

3 試練は、人間を強くする。

経営の神様と言われた松下幸之助は「岐路に立ちつつ」というエッセーの中で、動物園の動物たちが危険な荒野を駆け回っていたころの気持ちを引き合いに出しながら、次のようにいう。

「おたがいに、いっさい何の不安もなく、危険もなければ心配もなく、したがって苦心する必要もなければ努力する必要もない。そんな境遇にあこがれることがしばしばある。しかし、はたしてその境遇から力強い生きがいが生まれるだろうか、やはり次々と困難に直面し、右すべきか左すべきかの不安な岐路に立ちつつもあらゆる力を傾け、生命をかけてそれを切り抜けていく…そこにこそ人間として一番充実した張りのある生活があるともいえよう。困難に心が弱くなったとき、こういうこともまた考えたい。

日々の経営に先が見えないという経営者も多いと思う。しかし、松下氏がいうように、不安な岐路にたちつつもあらゆる力を傾け、生命をかけてそれを切り抜けていく気概を持ちたいものである。

以 上

(弁護士原 和良「となりの弁護士」「オフィス・サポートNEWS」 2011年7月号掲載)

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