05-08-01 : ひとこと言わせて頂けば「「忙しい」はやめよう」(弁護士原 和良) 

漢字とはよくできているもので「忙しい」とは、心を失うと書く。「忙しい」状態とは、その人がおかれている客観的な状況ではなく、その人の心の持ち方・状態の問題である。仕事がたくさんある、やることがいっぱいあるというのは、本来自分が人の役に立っている、充実した人生を送っているということであって、幸福なことであり楽しいことのはずである。だから、死ぬほど仕事が忙しい、というのはどこか働き方に問題があるのである。もっとも過労死のケースでそういう働かせ方をした会社の責任が問われるのはもちろんである。

何のために心がむしばまれるほど忙しく働かなければならないのか、もう一度考えてみよう。そもそも人生は、自分のためにある。仕事とは自分のために楽しめばよいはずである。人に使われて、あるいは人の評価を気にして翻弄される働き方はやめよう。こういうと必ず反論が来る。「自分は食べていくためには、がまんして働かなければいけないんだ。楽しんで働くなんて特殊な職業や地位にいる人だから言えることであって、全然わかっちゃいない」と。

私は、仕事を楽しむということは仕事がすべてうまくいって、楽で楽でしょうがない、などと言っているのではない。そんなに楽な仕事は、2日もすれば飽きてしまうだろう。要は、心の持ち方の問題である。目の前にある苦労やストレスを、よりよい人生のための試練、次の仕事への飛躍のチャンス、ととらえて明るく前向きに乗り越える努力をしようというのが、「楽しむ」という意味である。「仕方がない、頑張っても変わらない」、という発想からは何も生まれてこない。そういう人は、新しい職場に移ってもやはりそこで、新しい失望をするだけである。

最近、事件依頼が増えますます業務量が多くなった。しかし、心を失わないようにといつも自分に言い聞かせている。自分の健康や家族まで犠牲にしてやらなければならない仕事なんて、冷静に考えてみれば一つもない。それを、そう思い込んでしまうのは、心を失ってしまっているからだ。だから、どんなに仕事が増えても、週に何日かは事務所を抜け出してプールへ通う。朝は早起きして今日一日の仕事をイメージしながら、夜は一日の仕事を振り返りながら、公園を散歩することにしている。

「忙しい」人生は、やめにしよう。

以 上

(弁護士原 和良「ひとこと言わせて頂けば」2005.8掲載)

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