12-05-17 : となりの弁護士「たかがアメリカ…されどアメリカ」(弁護士原 和良)

1    アメリカでは、同性婚問題に関する政治的立場を長らく曖昧にしてきたオバマ大統領が5月9日、ABCテレビとのインタビューで同性婚支持を明言する言明を行い11月の大統領選を控え波紋が広がっている。

キリスト教カソリックの票が当選に大きく左右すると言われ、有力対立候補の共和党ミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事が、合衆国憲法を修正して同性婚を禁じるよう主張している中で、オバマ氏の言明は大きな賭けと報道されている。

2  この同性婚支持表明の背景は、昨年7月にニューヨーク州で施行された同性婚登録法(same-marriage legislation)だ。アメリカでは同様に州法で同性婚を認める州が9の州に上る。これらの州では、男性どおしの夫婦、女性どおしの夫婦の婚姻届が州政府で受理される(余談だが、イスラム諸国では、同性婚は死刑とされてる国も多い)。

生物学的には、同性から子供は誕生しないが、離婚して子供のいる人が同性婚をしたり、養子縁組をすると、同性婚夫婦も子供を持つ親となる(同じく同性婚を認めるフランスでは同性婚の養子縁組を禁止している)。子供を持つ同性婚夫婦の子育てが今、アメリカのメディアでは話題と論争になっているようである。

3     日本では、この10年間、夫婦別姓を認めるべきかどうかの議論が白熱していたが、家族の美徳が損なわれるなどという反対論が根強く、法制化の目途は未だ立っていない。

他方で、仕事柄相続事件でいつも出くわすのが、非嫡出子(婚姻関係にない子供)の法定相続分の問題である。婚姻関係にない男女から生まれた子供には、婚姻関係の下で生まれた子供の2分の1しか法定相続分がない。不合理な差別であるとして何度も最高裁で争われてきたが、最高裁は、非嫡出子差別を規定した民法の規定を合憲であると判断している。

最近、夫に好きな男ができて家を出て行ってしまった、という離婚相談をある女性から受けた。これに答える法律も判例も存在しない。

4     TPPや基地問題はじめ、ドラえもんに出てくるジャイアンのようなアメリカという国の自分勝手さには、うざったさを感じる人も多いだろう。しかし、世の中に新しく生起する諸問題に適応しようとする先進性やタブーのなさは、やはり自由の国アメリカの魅力でもあり、いつも尊敬するもう一つの側面でもある。

以 上

(弁護士原 和良「となりの弁護士」「オフィス・サポートNEWS」 2012年5月号掲載)

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