19-01-24 : となりの弁護士「独断と偏見で選ぶ2018年に活躍した弁護士・法律家ベスト10」(弁護士 原 和良)

弁護士は、基本的人権と社会正義の実現を使命とする仕事(弁護士法第1条)です。その仕事は、時に世間や社会を敵に回しながら、孤軍奮闘しなければならないときもあります。弁護士の視点から見た今年、社会に大きな影響を与えた弁護士・法律家を10人選んでみました。

 

1 神原元弁護士(武蔵小杉法律事務所)http://www.mklo.org/about/hajimekambara
人種・人権差別、表現の自由のために身体を張ってたたかう弁護士。2018年12月8日に横須賀市の「ウェルシティ市民プラザ」で予定されていた従軍慰安婦を取り上げた映画「沈黙~立ち上がる慰安婦」の上映会が、右翼団体の妨害に遭遇。後援をしていた市の教育委員会が後援を取り下げたことから、当日の妨害行動による上映が危ぶまれる事態に。神原弁護士は、即座に横浜地裁に右翼団体の映画上映妨害禁止の仮処分を申請。会場の周囲300m以内に近づいてはならないという決定をとり、無事上映会を成功させた。

 

2 岡口基一裁判官
現役の東京高裁裁判官。「要件事実マニュアル」という司法試験受験生・司法修習生・弁護士のバイブル本の執筆者である。彼は、筋肉隆々の肉体を白ブリーフ一枚で自撮りしてフェイスブックに投稿するので、お堅い裁判所の中ではいい顔をされていなかった。
ある愛犬家の民事事件をめぐり、裁判所は品位を害したとして懲戒請求され分限裁判にかけられ戒告処分となった。
裁判官にはめずらしく、市民感覚をもった裁判官で、日本の司法にはなくてはならない逸材である。

 

3 鴨志田祐美弁護士(弁護士法人えがりえ法律事務所)http://egalite-lo.jp/lawyer/
鹿児島の殺人えん罪事件として有名な「大崎事件」の主任弁護人。再審無罪を勝ち取るために一年中全国を奔走している。えん罪事件と原発差し止め訴訟は、長期間膨大な労力が費やされしかも、経済的な見返りはほとんどなく使命感がなければできない訴訟である。いつも前のめりになって事件に取り組む鴨志田弁護士の姿には頭が下がる思いである。

 

4 指宿昭一弁護士(あかつき法律事務所)https://www.ak-law.org/about/
10年前は、貧乏弁護士の典型例としてマスコミにも取り上げられた弁護士であるが、今や外国人労働者問題、技能実習生問題では国内での第一人者。先の国会では、入国管理法改正問題で、国会内外で専門家として引っ張り凧になった。労働者のために闘う弁護士というスタンスを徹底しており、国際自動車事件、ヒューレットパッカー事件など著名な労働事件を手がけてきた。

 

5 南和行弁護士(なんもり法律事務所)http://www.nanmori-law.jp/
LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダーの頭文字を取った略語)、つれあいの吉田弁護士との「夫夫」をカミングアウトして、マスコミの話題となった大阪の弁護士。自らも、性的マイノリティの権利擁護のために活動している。自分と異質なものを排除しようとする閉鎖的な日本社会が、本当の意味でダイバーシティを実現しないと、新しい社会は築けない。今後の活躍が期待されている。

 

6 今村核弁護士(旬報法律事務所)
NHK番組「ブレイブ 勇敢なる者」で取り上げられた「えん罪弁護士」今村核弁護士(http://junpo.org/lawyer_introduction/55)。「えん罪弁護士」と命名されたため、えん罪ばかりの相談が殺到し、「おれは普通の事件もやっているんだ」と本人はぼやいていた。有罪率99.9%の日本の刑事裁判の中で既に14件の無罪判決を獲得している彼が如何にすごいかは、法律家なら誰でもわかる。私も彼とは、何度か事件を一緒に取り組んだことがあり、そのうちの一件はちかん冤罪事件で無罪判決を獲得することができた。事件に向かう姿勢とたたかう精神は本当に敬服に値する。

 

7 北村栄弁護士(名古屋第一法律事務所)
全国の浜岡原発差止め訴訟などの原発差止め訴訟をはじめ様々な困難な事件に取り組みつつ、現在は、青年法律家協会弁護士学者合同部会の議長を務める(http://daiichi-law.gr.jp/staff/kitamura)。弁護士経験上は原和良の先輩ではあるが、私の後任の議長として名古屋から毎月2回、上京して全国の青年弁護士を束ねる。
経営力のある弁護士として定評で、会議では、人権活動を行いながら経営とどう両立させるか、と若手弁護士に熱くその経験・ノウハウを語り掛ける。

 

8 澤藤統一郎弁護士
ブログ澤藤統一郎の憲法日記(http://article9.jp/wordpress/)でDHCから政治家への政治献金問題を取り上げたところ、DHCから名誉棄損の損害賠償請求を受ける。公共性の高い企業不祥事に対し、情報発信者を訴訟等で威嚇する訴訟は、「スラップ訴訟」(http://www.slapp.jp/slapp)と言われ、大きな社会問題となっている。DHCは、澤藤弁護士に対して6000万円の損害賠償請求を行ったが、東京地方裁判所は、昨年9月2日、「「その内容は主として、政治家への資金提供の透明性を確保し、民主主義の健全な発展のためには、金員の提供を受ける政治家だけでなく、金員を提供する私人についても監視、批判が必要であることを訴えるもので、専ら公益を図る目的に出たものと認められる」と請求を退けた(https://seedsfornews.com/2015/09/dhc/

 

9 樋口英明(元)裁判官
2015年4月14日、福井地方裁判所の裁判長として、高浜原発3・4号機の再稼働差止め請求事件で、関西電力に対し、再稼働の差止めを命じる決定を出した裁判官(現在は、退官)。本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている。」との格調高い決定書は、多くの国民を励ました。
退官後も、各地で裁判官の役割について講演活動を続けている。

 

10 亀石倫子弁護士
令状なしのGPS捜査について、刑事訴訟法違反の最高裁判決を勝ち取る。その他、クラブ風営法違反事件、タトゥー医師法違反事件など刑事弁護の最先端で活躍する大阪の若手の女性弁護士。今年の参議院選挙に立憲民主党から立候補予定。

 

以上

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