19-08-28 : となりの弁護士「『人を動かす』犬 」(弁護士 原 和良)

1 今から18年前、バブルに踊らされて金融機関から言われるままに不動産投資を行い、10億円ほどの借金を背負わされた医師の債務整理の仕事を受けた。彼は、都心の病院を手放し、地方都市に移り医院を再開。ポメラニアンのブリーダーも趣味でやっていた彼は、弁護士費用が支払えず生まれたばかりのポメラニアンの子犬を私にくれた。 我が家では、その子犬に「ターザン」という名前をつけて3人の子どもたちが面倒を見てくれた。やんちゃなターザンだったが、子どもたちに生きること、命の大切さを教えてくれた。8月9日、ターザンは静かに旅立った。大往生である。 家族みんながターザンからたくさんのことを学ばされた。家族を失うのは本当につらいものである。

 

2 ターザンを思い出しながら、昔読んだある本の一節を思い出した。デール・カーネギーの「人を動かす」という本である。アメリカの人間関係研究の第一人者で、ビジネスマンや経営者など多くの人に愛されるロングセラーの一つである。
その本の「人に好かれる6原則」の中に、他人に対して誠実な関心を寄せることの大切さを説く中で、次のようなくだりがある。
「友を得る法を学ぶには、わざわざ本書(「人を動かす」の本のこと)を読むまでもなく、世のなかでいちばんすぐれたその道の達人のやり方を学べばいいわけだ。その達人とは、…われわれは毎日路傍でその達人に出あっている。こちらが近づくと尾をふりはじめる。立ちどまって、なででやると、夢中になって好意を示す。何か魂胆があって、このような愛情の表現をしているのではない。家や土地を売りつけようとか、結婚してもらおうとかいう下心はさらさらない。
何の働きもせずに生きていける動物は、犬だけだ。にわとりは卵を産み、牛は乳を出し、カナリアは歌を歌わねばならないが、犬はただ愛情を人にささげるだけで生きていける。」「人はだれでもみな、自分をほめてくれるものを好くものだ。…友人をつくりたいなら、まず人のためにつくすことだ。…人のために自分の時間と労力をささげ、資力ある没我的な努力をおこなうことだ。」

 

3 われわれ人間は、自分のことにしか関心がない。自分本位で人や外部を判断しがちだ。そして自分さえよければ人がどうなろうと構わない、という殺伐とした社会の傾向が、ここ近年強まっているように思えてならない。
もしも、仕事や人間関係に行き詰っているのであれば、それは他人の関心、他人の人生に誠実な関心を寄せてみることが、一つの解決の鍵である。

 

以上

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