23-01-30 : となりの弁護士「がんばってもうまくいかないとき~成長のS字カーブ」(弁護士 原 和良)

1 人生がんばってもうまくいかないときがある。おそらく、生きていればどんな人でもそんな経験をしたことがあるだろうし、毎日がその連続かもしれない。

 

2 脳科学的には、人間の脳というものは、努力と成長・成功は正比例の関係で、直線的に成果をどうしても期待してしまうらしい。しかし、実際には、努力の成果は、正比例するものではなく(正しい方向で努力していればだが)、はじめはゆるやかなカーブで上昇していき、ある時急激に、成果が見えるようになるS字型の成長をする。S字の上り坂を上っている時は、脳の顕在意識と実際の成果との間にギャップが、脳にとっては大きなストレスとなるのである。
これは、試験勉強でもそうだし、仕事でもそうである。


アップルの創始者である故スティーブ・ジョブズは、2005年、スタンフォード大学の卒業式でのスピーチで「connecting dots to line」という自らの体験を通じた演説をしている(https://youtu.be/RWsFs6yTiGQ)。
「将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎあわせることなどできません。できるのは、後からつなぎ合わせることだけです。…だから、我々はいまやっていることがいずれ人生のどこかでつながって実を結ぶだろうと、なにかを信じるしかないのです。…点が道をつなぐと信じていれば、あなたはあなたの心に従う自信を得られるでしょう。」
このジョブズのスピーチも、成果につながらないように見えた「失敗」や挫折、いわば寄り道が、あとから振り返ると、ちゃんと点と点が一つの線でつながっていて、今の自分を形成している、ということを伝えている。

 

3 特に私は、弁護士という勝負のかかった事案を取り扱っているため、日々困難にぶちあたる。それは、司法制度の壁であったり、個々の裁判官の問題であったり、依頼者・相手方その他事件の関係者の問題だったりもするが、その根底には自分の能力不足が必ず潜んでいる。
そのような壁にぶちあたったときは、S字型成長の曲線を思い浮かべ、努力するしかない。この点がどこかで線につながると信じて、突破口を見つけることに力を傾注する。そうするとどんなに出口の見えないような難題も、打てる策は何通りもある、ことに気が付くことも少なくない。

 

以上

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