23-02-28 : となりの弁護士「ブレーメンの音楽隊と中小企業」(弁護士 原 和良)

1 19世紀初頭に書かれたとされるグリム童話の中に、「ブレーメンの音楽隊」という有名な童話があるのは、みなさんもご存じであろう。
年を取って、荷物が運べなくなったロバは、飼い主から虐待を受けたため、飼い主から逃げ出してブレーメン(現ドイツ)に行き、音楽隊に入隊しようと旅に出る。その旅の途中で、ロバは、同じく狩猟で獲物が取れなくなった老いた狩猟犬、ネズミを退治できなくなった老いたネコ、声が出なくなって使い物にならなくなったオンドリらと出会い、一緒にブレーメンを目指す。
旅の途中で、ロバたちは、一軒の明かりを灯した家を見つける。近づいて部屋の中を見るとどろぼうたちが、金貨財宝を奪い、おいしそうな食事をしていた。
ロバたちは、どろぼうを追い出そうと画策する。ロバの背中に犬が乗り、犬の背中にネコが乗り、ネコの背中にオンドリが乗り、窓から一斉に、「ヒヒーン、ワンワン、ニャー、コケコッコー」と叫んだ。
どろぼうたちは、聞いたことのない雄たけびと、窓に写ったロバたちの影を見て、お化けが出たと驚き、一目散に退散する。
ロバたちは、その後この家で平和な生活を送った、というあらすじの話である。

 

2 ブレーメンの音楽隊の話は、いたるところでこの話の教訓が語られている。新しい環境での再出発を目指すことの大事さや、仲間との協力の大切さ、不測の事態への臨機応変な対応、老後の人生のあり方、など様々な立場の人が立場、立場で、教訓を説いている。
中小企業にとって、どんなことがここから学べるのだろうか、と考えてみた。
中小企業には、大企業のように有能な人材は揃っていないし、集まりもしない。人材を確保するだけの財源は不足しているからだ。限られた経営資源で経営を維持していかなければならないという宿命を負っている。
自社の弱点や人材の問題点・課題点を挙げろと言われればキリがないくらいあるというのが中小企業である。
しかし、ないものを嘆いても仕方がない。足りないものではなく、自社にあるもの、すなわち自社の強みや社員の強みで、勝負するしかないのである。ブレーメンの音楽隊は、一見弱点だらけのロバたちが、その強みを生かし、強みで協力し合って新しいものを作り出した話と解釈すると、奥が深い童話である。

 

以上

Menu