22-09-30 : となりの弁護士「日本経済の長期低迷と円安」(弁護士 原 和良)

1 比較するということ
 人が幸福になるためには、「他人と比較しないこと」だと心理学の世界では常に言われる。人の人生と他人の人生を比較して、自分が劣っているところばかりに目を向けるのは、確かに無意味なことであり、その指摘はその通りである。
 他方で、自分を客観視するための有効な方法は、人と比較すること、国で言えば他国と比較すること、歴史を踏まえて今を振り返ること、は自分の思い込みや固定観念を変化させる上では有効な方法である。これも道理である。

 

2 円安と日本経済
 私の事務所には、しばしば海外の学生や司法修習生がインターンとして研修に訪れる。ここ数年彼ら(彼女たち)が来日して一番印象に残るのは、「昼飯が1000円以内で食べられる」という「物価」の安さだ。お弁当が500円、外食で食べるラーメンが800円で食べられるというのは大変ショッキングのようである。
 円高だったころは、1ドル80円であった。現在は1ドルが140円を超えていて、海外の人から見れば、日本の商品価格が半額近くまで安くなっているという計算になる。
 他方で、ニューヨークでラーメンを注文すると1杯2000円~2500円もする。10ドル=800円だったラーメンが、円安の影響により10ドル=1400円を払わなければならなくなっている。
 それでも計算が合わない。それは、経済成長と物価上昇の影響があるからだ。

 

3 30年間経済成長が止まった日本
 それは、経済成長の格差である。2020年のOECD(経済協力開発機構:38か国)の統計でみると日本の平均賃金は、1990年から2020年までの30年間ほとんど増えていない。欧米各国は確実に経済成長を遂げ、その影響で労働者の賃金も増加している。もちろん物価水準も上昇しているので、ラーメンの値段も円安効果だけでは説明できない金額になるのである。
 最も平均賃金が高い国はアメリカで年額6万9392ドル(1ドル140円換算で9,714,880円)、日本は3万8515ドル(同5,392,100円)で加盟国中22位である。
 もちろん、物価も高いわけだから単純比較はできない。日本は、安全安心で物価が安くて住みやすい国であるといういいところもあるし、経済成長至上主義に陥ってはならない。しかし、グローバル化した世界の中で共存共栄していかざるを得ないのも事実である。
 少なくともいえることは、世界から見れば日本人は特別にえらくも豊かでもないということは自覚した方がよいのである。

以上

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